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ティム・スペクター
ダイエットの科学
「これを食べれば健康になる」のウソを暴く

ガイド

原題は『The Diet Myth』(ダイエットの神話)

書誌

authorティム・スペクター
editor熊谷玲美(訳)
publisher白揚社
year2017
price2500+tax
isbn978-4-8269-0194-9

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2026.2.18読了
2026.3.2公開

最近はダイエットに関してもエビデンスに基づいた本がちらほらと見られるようになり、本書のその一つである。後書きやカバーにもある通り、本書の原題は『The Diet Mith(ダイエットの神話)』であり、世間で喧伝されているダイエット法に万能なものはないことを、食品パッケージで示される代表的な栄養素ごとに解説している。そして、ダイエットにおいて個人差が大きいのは腸内細菌の個人差によるものであることを説き、自分に合った腸内細菌の多様性が得られる食事を推奨している。

具体的に推奨されている食品としては、ナチュラルチーズ、天然由来ヨーグルト、エクストラバージン・オリーブオイル(低品質のものは効果がない)、魚・海藻、食物繊維、ポリフェノール(ダークチョコレート・ナッツ・コーヒー)などであり、逆に加工食品全般、砂糖・人工甘味料、サプリメント、過度の抗生物質などは避けるべきだとしている。合わせて摂取する食品の数を増やすべきだとしている。

実は個人的に本書を読んで一番納得したのは、人間は加熱調理を覚えることによってカロリーの吸収がしやすくなり、その結果として長い咀嚼や小腸が不要となり、脳が発達して他の動物とは異なる進化を歩んだという点だった。また腸内細菌は何万年もかけずとも新しい食生活に対応できており、牛乳を飲めたり海藻から栄養を摂れるのも、割と最近のことらしい。逆にいうと近代以降の一日三食というのも絶対的である必要はなく(狩猟時代には食べ物を取れないときもあったであろうから)、適度な断食や羽目を外すことも、逆に多様性にとっては意味があると指摘している。

このため本書の主張はエビデンスを裏付けるための注釈が非常に多く、それだけで50ページ以上あるが、いうまでもなく刊行後の最新の研究結果と本書の主張との間で食い違う箇所もある。例えば本書では少量のワインは著者も好み、アルコールに関してはそれが通説だったと思うが(cf.p273)、最近WHOが酒は少量でも発がんのリスクがあると発表するなど、この辺は読者の側でも知識のアップデートが必要だろう。とはいえ、逆にエビデンスのないものに関してははっきり分からないと説明されている点では好感が持てる。

結局のところ「銀の弾丸はない」というのは、ソフトウェア工学に限らず、ダイエットでもその他のことにも当てはまるということなのだろう。言い換えれば「銀の弾丸はない」のであれば、安易な解決策に飛び付くのは常に注意すべきということなのだろう。

抄録

12

ここ三〇年を振り返ると、私たちの食生活のおよそすべての要素が、専門家の誰かしらによって槍玉にあげられてきた。しかし、そうやって厳しい目にさらされてきたにもかかわらず、食事の質は世界全体で低下し続けているのが現状だ。こうしたなかで私が見つけたかったのは、兼行を維持する効果があって、よくある現代病の大半について発症リスクを減らす、あるいは症状を緩和してくれるような食事法だった。ところが人気があるダイエット・プランのほとんどは、兼行や栄養よりも体重を減らすことに重きを置いている。実際に世の中には、太りすぎだが代謝系の病気にはほとんどかかっていない人もいれば、見た目は痩せていて皮下脂肪も少なそうなのに、内臓脂肪が多くて、かなりひどい健康状態にある人もいる。しかし、その理由はまだ科学的に説明されていない。

ダイエットという習慣は、伝染病のように大流行している。-/-

14

-/-こういったキャンペーンや公的に推奨される摂取量には、明確な根拠がほとんどない。シンプルなメッセージを伝えることが、科学よりも優先されてしまっているのだ。また、国を越えた一貫性もない。-/-