松本由里子
いわさきちひろの願ったこと
ガイド
絵の背景にある彼女の一生を追った本
書誌
| author | 松本由里子 |
| publisher | 岩波ブックレット |
| year | 1995 |
| price | 400 |
| isbn | 4-0-003314-X |
履歴
| editor | 唯野 |
| 2026.3.23 | 読了 |
| 2026.3.29 | 公開 |
いわさきちひろ美術館は現在、彼女自身が第二の故郷と呼んだ長野県安曇野市にあり(彼女の両親が長野県出身で戦中と戦後の一時期を長野県で過ごした)、私が訪れたのもかなり以前になるが、今でも覚えている。
本書はそれ以前の東京にできた美術館設立に動いた著者による、ちひろの一生を追った本である。特に彼女の水彩画が幼児期に学んだ書などの影響を受けている点などが、非常にわかりやすく解説されている。また、戦争が彼女自身にも大きな影響を与えたことにも触れており、それが夫を含めた共産党との出会い、反戦のメッセージとしてつながっているのがよくわかる。こういう本が手頃な長さでまとまっているのは、とてもよいことだと思った。
抄録
3
「青春時代のあの若々しい希望を何もかもうち砕いてしまう戦争体験があったことが、私の生き方を大きく方向づけているんだと思います。平和で、豊かで、美しく、可愛いものがほんとうに好きで、そういうものをこわしていこうとする力に限りない憤りを感じます」と語ったいわさきちひろ。
三人姉妹の長女に生まれたちひろは、戦前の家父長制のもとで、婿養子をとって家を継がねばらない運命を背負わされていた。どんなに絵が好きで、才能があろうとも、絵描きになりたいという夢がかなえられる時代ではなかった。
6
いわさきちひろ(岩崎知弘)は一九一八年(大正七)年十二月十五日、女学校教師をしていた母文江の勤務先である、福井県武生市に生まれる。第一次世界大戦が終結し、交戦国を中心に、平和を求める声が世界に広がっていた時代だった。だが、前年、ロシアに革命が起こると、日本は居留民の保護を口実に、満州への野心を秘めながら、この年シベリアへ大挙兵を送っている。ちひろの父正勝も、身重の妻を残して十月にはシベリアへ出征していた。正勝は陸軍築城本部に努める建築技師だった。
6
「私は信州人なの」とちひろが語っていたように、ちひろは両親の故郷信州をこよなく愛していた。-/-
