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大西巷一
乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ 全12巻

ガイド

フス戦争を通じて戦争の負の側面も示す

書誌

author大西巷一
publisher双葉社
year2019
price620?tax
isbn978-4-575-85320-9

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
?読了
2026.6.28公開

後世の宗教改革につながったとされるフス戦争を扱った漫画。フス派に身を投じた少女シャールカが主人公であるが、全編を通じて騎士に対抗する農民軍、すなわちこれまた後の近代的な軍事組織の嚆矢とされるヤン・ジシュカらを中心とした、神聖ローマ帝国に対する十字軍との戦いを描く。また後半には当時の英仏百年戦争で活躍したジャンヌ・ダルクなども登場させながら、最終的にはフス派の内部分裂による急進派の崩壊に伴う戦争終結までが描かれている。

シャールカは冒頭からひどい目に遭い、その後も拷問を受けたり記憶を失ったりと散々な目に遭うが、ドイツ騎士団の騎士として登場するヴィルヘルムの生き様も含め、戦争の惨さから目を背けない描写も多い。そもそものフス本人が騙されて異端として火刑に処されたことがフス戦争の発端であるため、登場人物のほとんどが良くいえば数奇な運命、悪くいえばろくな死に方をしていない。本作はそういった戦争の負の側面もはっきり伝えているが、とはいえ巻末には作中に登場する事柄への史実に基づいた補足もあり、西洋史に詳しくなくても問題なく読み進められるようになっている。また、シャールカ自身も作中で子供を産み、それが最後につながっているのが、せめてもの救いか。

歴史的にいえばフス戦争は後のプロテスタントを生む流れを作ったのは確かだが、結局のところ早すぎる改革は、そういう段階が必要であったとしても、当人の死などで瓦解するのも早い。秦の始皇帝、織田信長、ガリレオなどはそういう系譜に連なると私は思う。なぜなら、それが正しかったとしても反動が強いため、クッション的な時間を挟まないと先に進めなくなるのだ。秦に続く漢、隋に続く唐、信長・秀吉に続く家康などが長期にわたる政権を作れたのは、その前段階があればこそである。

その一方で昨今のAIの進化などはそれさえをも取っ払ってしまっている感がある。そう考えるとすごい時代に我々はいるともいえる。

抄録

1巻

1巻 p.143

1巻 p.187

巻末には図を含めた当時の社会の説明があり便利。合わせて作中で史実とは異なる部分にも言及されている。

2巻

2巻 p.135

そのヤン・ジシュカが視力を失い病に倒れた後も物語はフス戦争の終結まで続く。