東西不思議物語
書誌
| text | 唯野 |
| author | 澁澤龍彦 |
| publisher | 河出文庫 |
| year | 1982 |
| price | 480 |
| isbn | 309-40033-7 |
履歴
| 2002.6.26 | 読了 |
| 2002.7.7 | 公開 |
| 2002.7.8 | 修正 |
感想
古今東西の不思議譚を集めた本。こういう話題の本というのは博識さが求められるもので、単に好きというだけでは書けないのではないかと思う。ただ、同時にこれはこれでひとつのジャンルといってよいので、以前なら庄司浅水氏などその気になって探せばそれなりに類書もあるのではないかと思う。
しかし、さすがというか問題の本質を捉える点において澁澤龍彦は的確だ。本書の場合も前口上で的を得た一文があるので紹介しておこうと思う。
それにしても、不思議を楽しむ精神とは、いったい何であろうか。おそらく、いつまでも若々しさを失わない精神の別名ではなかろうか。驚いたり楽しんだりすることができるのも一つの能力であり、これには独特な技術が必要なのだということを、私はここで強調しておきたい。(p.4)
抄録
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この式神のことを考えると、私の頭にすぐ思い浮かぶのは、十六世紀のヨーロッパに生きていた大魔法博士、パラケルススである。彼はヨーロッパの陰陽道ともいうべき、錬金術や占星術の大家だった。伝説によると、パラケルススがつねに身辺から離さなかった剣には、柄頭(つかがしら)に丸い握りがついていて、そのなかに、一匹の悪魔が封じこめられていたという。-/-
17
人間の魂が睡眠中、いろんな小動物の姿になって、ふらふらと肉体を遊離するという信仰は、ヨーロッパばかりでなく、インドでも中国でも日本でも、昔からたくさん知られている。
28
ヨーロッパでは、この両頭蛇をアムピスバエナと称する。ギリシア語で、アムビとは「二つの方向」という意味であり、バイネインとは「進む」という意味である。つまり、両端が頭であるから、どちらの方向にも進むことができるというわけだ。-/-
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その表面にあらゆる物を映し出す鏡は、洋の東西を問わず、昔から最も神秘的なものと考えられてきた。鏡のなかは別世界であり、しかも私たちの現実世界とシンメトリック(対照的)なのである。これだけでも、鏡が古代人にとって、いかにふしぎな魅力にみちたものであったかを察するには十分であろう。
続けて、西洋では魔法の鏡を用いた占いのことをクリスタロマンシーというとのこと。更にはボルヘスのものという次の中国の話がおもしろい。
鏡の世界と人間の世界とは、かつはお互いに隔てられていず、自由に出入りすることができるような二つの世界だったのに、ある時、鏡の国の連中が地上に攻めてきた。そして血みどろの戦いの末に、黄帝の軍隊が侵略者どもを撃退し、彼らを鏡のなかに閉じこめて、人間の一挙手一投足を一つ残らず繰り返すという義務を彼らに課した、というのである。
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まるで鏡にでも映したように、自分自身のすがたが目の前に現れたら、大抵のひとは恐怖のあまり、声も出なくなってしまうのではないだろうか。正常なひとには信じられないかもしれないが、こうした現象は昔から知られており、精神医学上の用語ではオートスコピー(自己像幻視)という。
そして、芥川龍之介がこれに異常な興味を示したとある。
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