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三文役者の待ち時間

書誌

text唯野
author殿山泰司
publisherちくま文庫
year2003
price820
isbn480-03805-1

目次

1感想
2抄録

履歴

2003.12.1読了
2003.12.4公開
2003.12.7修正

感想

だいたいにおいて好きな作家の未読の本というものは、読む前の本屋で散見し目に入っただけで嬉しくなってしまうものだが、氏の本もすっかり私の中ではそういう位置を占めるようになってしまった。とはいえ、著者の場合は既に故人であるから、新作は永遠にありえないところが困ったところである。

本書は全体的にいって氏の読んだミステリ寸評、聞きに行った JAZZ ライブの寸評、そして主にこなした役者としての仕事――をミックスさせて毎月ごとにまとめた文章として構成されている。とはいえ、半分以上を占めるのはミステリの書評部分で、これがまた独特の殿山節、キイキイ読んだとかハフハフ読んだという言葉で次から次へと並べられている。

残念ながら私はどちらかというとミステリをあまり読まないし、ハードボイルドもチャンドラーをかじった程度だし、国内のミステリ作家にもほとんど縁がないという感じなので、通読こそしたが、それは違和感を感じながらというのが正直なところであった。しかし、逆にいえばミステリファンにはこたえられない内容といってよいように思う。

ところで、本書を読んでいてふと、これまでに書かれた推理小説で殺されてしまった人の数を累計したら日本全国誰もいなくなってしまうのでは――などというどうしようもないことを思いついた。やはり私にミステリは向いていないのかもしれない。

抄録

14

ハイそれもこれも大日本帝国に生まれたお陰だと思っております。兵隊サンとなって 4 年半も戦場へ行きました。たった 1 人の弟も戦死しました、一家も離散いたしました。みんな大日本帝国のお陰であります。テンノウヘイカありがとう !! 自分で書いておりながらこんなとこへ天皇が登場するとは思わなかったなァ。ビックリ仰天 !!

16

仕事場でも街でも自分の家でも、自分以外の人間がおれば、女らしい以上に女らしく振舞い、それが必要とあれば男以上に男らしく振舞って見せ、いつも虚構の中に自分をおき、あくまでも女優らしく、そして世の老若男女の羨望の目をチカチカと一身に受けるのだ。そのかわりですよ諸君、男への愛を捨て、二度も三度も捨て、子供への愛も捨て、二度も三度も捨て、家庭円満などは夢にも考えず、そうです、魔女の如き冷酷無残な精神を持たなければいかんのだ。ダレにでもできることではありません。だからこそオレは女優サンを尊敬する。心から尊敬する。ニッポンにかぎらず世界各国においても大女優の少ないゆえんである。女優は神サマです。神サマとオネンネする奴がいるか ?

20-21

-/-それはさておき、オレが問題だと思ったのは、この『モロッコ』を見てからというもの、オレの清らかな精神はそこはかとなく狂ってしまい、外人部隊に入るのは不可能らしいから、せめて役者になってみたいなァ、なんてことをうだうだと思考するようになったからであります。『モロッコ』は、『モロッコ』は、オレの一生を狂わせてしまったのだ。どないしてくれるねん、ええ !!

22

オレのいちばん好きな作家はダシル・ハメットとレイモンド・チャンドラーとロス・マクドナルドである。これでオレのミステリ・ファンとしての傾向が分かってもらえると思うけど――どうでもいいことか、失礼失礼。なんせオトコがスキでオンナはキライだから、アガサ・クリスティを読むようになったのもミナサマよりずうッとあと。女流作家で気に入ってるのは一人もおりませんハイ。アチラさまもオレさまを気に入っておりませんハイ。関係ねえか。

75

-/-そうそう、さきほど独房と申しましたが、オレたちはニッポンという大きな監獄に入ってるのでしたね、忘れておりました、ごめんごめん。-/-

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