変容する携帯電話サービス
ヘンヨウスルケイタイデンワサービス
書誌
| text | 唯野 |
| author | 杉山泰一, 川崎慎介 |
| publisher | 日経BP社 |
| year | 『日経コミュニケーション 2002.5.20』p.72-93 |
履歴
| 2002.5.21 | 読了 |
| 2002.5.21 | 公開 |
| 2002.11.28 | 修正 |
感想
移動体産業の今年の動向を扱った記事。全体的には他のメディアでも伝えられていることなので特に新奇さはないが、まとまりとしては手頃かなということで要約した。今後は関連情報があれば、こちらに追加するかたちで整理していきたいと思う。
追記
3G への強い意欲を打ち出していた NTT ドコモであるが、FOMA があまりにも不振なため 2G へのてこ入れをせざるを得ない状況になっている。具体的にはカメラ搭載端末(251i)、FOMA 併用契約コースの投入などだが、恐らくは FOMA 基地局がそれなりに全国をカバーしてサービスが 2G 並になるまで本格的な普及は難しそうな状況にある。国内での圧倒的優位は変わらないだろうが、その間に海外を含めた関係において後れを取らずに済むかどうかがポイントではないだろうか。(2002.7.14)
抄録
成長の鈍化
2001 年より、それまで急成長を見せていた携帯電話サービスにも翳りが見え始めている。要因として以下が挙げられる。(ちなみに、現在の国内における携帯電話の人口普及率は 54% で、欧米のようなプリペイド型のない分、欧米よりも低い数字が飽和点になるものと見られている。)
- 携帯電話の人口普及率がほぼ飽和状態
- 新規加入者の通話料による成長が見込めない (インセンティブによる端末の低価格化の限界)
- 不況による ARPU (1 ユーザあたり月間利用料)の低下 (特に音声 ARPU の低下が顕著)
- 普及率上昇に伴い新規加入者は利用頻度の低いユーザが主体
- 3G への移行に伴う収益の悪化
- NTT ドコモ、au は急速、J-PHONE はゆるやかな展開
# ちなみに ARPU に似た指標として MOU (月間平均通話時間)がある
その上で収益改善のための施策として以下の 4 つが挙げられる。
新規ユーザ開拓、解約率低下による加入者数の拡大
下図はキャリアごとの収益モデル図で、解約率と加入者獲得コストは推定値。但し、今後はインセンティブ(販売奨励金、端末 1 台あたり 3〜4 万円)の減少により、加入者獲得コストの減る結果、端末価格は高い状態になることが予想される。そのため、新規ユーザよりも既存ユーザの囲い込みが重要となり、具体的には既存ユーザの家族の取り込み、新サービスによる顧客満足度の向上、それに対するマーケティング、ブランドイメージなどが問われることになる。また、これまでは料金の値下げが新規ユーザの獲得につながっていたが、最近ではその効果が薄れてきたため、今後は単純な料金の値下げは行われなくなる可能性が高い。(例えば、NTT ドコモは毎年、決算時期に年 2 回の値下げを行ってきたが、2001 年 6 月の値下げでは効果が得られなかったため、2001 年後半での値下げを見送った。)
| キャリア | NTT ドコモ | J-PHONE | au |
| 解約率(月間) | 1.19% | 2.25% | 2.6% |
| 加入者獲得コスト | 3 万円 | 3 万 8 千円 | 4 万 6 千円 |
| 端末実売価格 | 2〜3 万前後 | 1 万代後半〜3 万円 | 1 万弱〜2 万弱 |
新しいサービスなどによるトラフィックの拡大
この分野で特に注目さているのがデータ通信、特に人間以外のものに着目したユビキタス市場となる。これには自動車だけでなく、ペット、自転車・バイク、自販機、小包、テレビ、冷蔵庫、カメラなどが含まれる。これらは ARPU は低いが利用率が高い、特定用途のため処理や装置が複雑にならない、インセンティブが基本的に不要、トラフィックが通常の音声用のネットワークを圧迫しにくい、(組み込みとして利用されるため)解約率が低い――などの点で利点がある。現時点では自動車への普及が見込まれており、基本的にキャリアのパートナー企業がキャリアのネットワークを用いた独自端末でのサービスとして展開している。(これを MVNO : 仮想移動通信事業者と呼ぶ。)ほかに安定した高い ARPU を得やすい法人ユーザの獲得、ブラウザフォンだけでない(人間のコミュニケーションに着目した)新たなデータ通信サービスの提供など。J-PHONE の写メール端末などは付加価値によって端末の高価格を維持できている一例といえる。
3G 導入による使い勝手などの向上
各社とも基本的に 3G では、まずデータ伝送速度と通信品質の向上によるサービス品質の向上に重きを置いている。特に NTT ドコモでは 2002 年から 3G をサービスの中心として積極的な展開を目指している。これは NTT ドコモの 2G ネットワークではユーザを収容する周波数がほぼ限界に達していること、技術的先進性が競争力につながるといった方針に基づいている。これに対し J-PHONE では 3G への投資を控えて 2G との共用を、一方 au は現行のインフラを流用しやすい cdma2000 1x によって 3G への早期展開を進める構えとなっている。しかし、3G では端末も高機能化するため、ベンダ間での提携による開発コストの低減といった動きが活発化しつつある(下図)。(特に現在では消費電力低減が課題になっている。)また、無線 LAN との併用(有線では定額の xDSL などが普及しつつあるため、単純に現行の 3G の速度では優位性を打ち出せないため。但し au は 1x EV-DO による事業展開を念頭にしているため除く)への着目などがある。
| 時期 | ベンダ | 概要 |
| 2001.8 | NEC、松下通信工業 | 3G 端末開発での技術提携 |
| 2001.11 | ソニー、エリクソン | 両者の担当部門を統合した新会社設立 |
| 2002.1 | 富士通、サジェム(仏) | スマートフォン開発での技術提携 |
| 2002.3 | 三菱電機、東芝 | 3G 端末開発での技術提携 |
| 2002.4 | モトローラ、シーメンス | 3G 関連技術をモトローラがシーメンスに提供 |
このため既に FOMA 端末では NEC、松下はベース部分では同じになっている。しかし、一方で松下は海外向けでは OS として Symbian (昔、私も使っていた Psion に搭載されていた EPOC ベースのもの)を採用するなど、携帯電話と PDA の垣根が確実になくなっていく中での、OS の位置付けの変化がよく分かる。一方、au は(CDMA の基本的な特許の多くを持っているのだから当り前ではあるが) QUALCOMM 寄りということになる。
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