活字のサーカス
-面白本大追跡-
書誌
| text | 唯野 |
| author | 椎名誠 |
| publisher | 岩波新書 |
| year | 1987 |
| price | 480 |
| isbn | 0-420389-9 |
履歴
| 2000.6.11 | 読了 |
| 2000.6.11 | 公開 |
| 2001.7.4 | 修正 |
感想
椎名誠による本を触媒としたエッセイ集。本への関わりが著者自身の生活まで密接に結びついている様を見ることができて、読書好きとしてはそれだけで嬉しくなってしまう内容になっている。もちろん挿絵は沢野ひとしなので、例によって独特のシーナワールドを堪能することができる。本書がなぜ文庫ではなく新書なのか――実をいうとそれが私の中で最初に浮かんだ疑問だったが、その種明かしを著者自身が本の中でしている。要は「本の中でも新書の大きさがよい」ということらしい。個人的にはとにかくサイズの方が重要なので新書より文庫という気持ちがあるけれども、考えてみればこのところ文庫ばかり読んでいて新書はあまり読んでいなかったことに思い至り(本の内容とは何の関係もないのだけれども)新書も読もうかな...という気持ちになった。
抄録
1
世の中には直面するのを楽しみにしたい?問題?もある。
旅に出るときにどんな本を持っていくか、という問題などは非常に難しいけれど非常に楽しい問題であり、わたくしなんぞは何時でも何回でも直面したいものだと思っている。
5
一ヵ月以上も日本の情報から隔絶されたところを旅していると、週刊誌に書かれていることがたいして面白くないのである。というよりもなんだか妙にシラけてムナシイ、という気分になってしまうのだ。カラーグラビアあたりでこっちむいてニコッと笑っているアイドルタレントの顔などは「ぼくたちよくわかんないけどシアワセなんでえーす」と言いつつ二秒後に白眼むいてアワでも吹きだしかねないような本格的な白痴顔に見えてしまう。
7
旅をしながら本を読んでいて気がついたのは、場所が本を選ぶということがたしかにあるようだ、といことである。それからまたどんな旅をするか、ということで持っていく本、読みたい本がくくられていく、ということもある。
29
著者にとっての 1960 年代は SF の 10 年間だった。
41-42/43-44
インドを実際に歩いてみたらすぐわかってきたのだが、インドは神秘よりも「したたか」のほうが優る国である。それと同時にインドという国はかなり虚飾されている国である。虚飾はインド自身によるものでなく、インドを見る観光資本の眼によるもの、といったらいいだろうか。
ぼくがそうだった。インド本を何も読まないうちに、インドというのは暗くて苦悩にみちていて神秘的で、どこを歩いても悠久三千年の死の歴史と呪縛による目に見えない圧迫がある……と、そんなふうに考えていた。
ところがいざこの眼でインド神秘の象徴、バナーラスの沐浴風景を見ると、それはこれまで知らず知らずのうちに日本のジャーナリズムに予備学習されていたイメージの世界とは随分違っている、ということに気がつくのだ。
全文を読まれる場合はログインしてください
