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カヌーで来た男

書誌

text唯野
author片岡義男, 野田知佑
editor佐藤秀明(写真)
publisher新潮文庫
year1995
price680
isbn10-141006-2

目次

1感想
2抄録

履歴

2005.11.25読了
2005.12.16公開
2005.12.18修正

感想

かなり以前に一度読んでいる感じのする本なのだが、その記憶がないので再読した本。体裁は片岡義男による野田知佑へのインタビューというかたちになっている。とはいえ、読み終えての感想としては、定期的に野田知佑の本を読むのは何より精神衛生上よいのではないかということであった。

抄録

8/12

──川のなかに、おさない自分の体を入れるからでしょう。陸から川を見ててもあまり面白くはないわけで、少年は川のなかにトータルに自分を入れてしまうことが出来るから、面白いのですね。入れることによって、ひとつひとつ、学んでいくのです。

──川に入って魚をとるにしても、子供がはじめからいきなり川に入って魚をとることが出来たのではなく、大人たちがとるのを見て、早く自分たちもあんなふうにして魚をとりたい、と思っていた時間の蓄積がまず大切だと思います。

32

「ひらめいた。これ(折りたたみ式カヌーのこと:唯野注)を使って旅が出来る、と思った。ドイツのファルトボート(折りたたみ式のカヌー)は、ひとつひとつの部品が精密機械のような、非常によく出来たものなんだ」cf.98

44

「だからぼくは、三八歳にして本当に出発してるのですね。フリーでしかも離婚してしまったのですから、どこへいってなにをしてもいい、ということですからね。」

48

「(時間の進行が:唯野注)とても早いときと、遅いときとある。なにもしなくても、充実してるね。昼が来て、昼飯を食べて、眠くなる。だから、昼寝をする。目覚めて、身も心もリフレッシュして、また遊ぶ。そして、夜の八時か九時には、眠くなってくる」cf.107

57-59

「関心がないから、政府はやりたいほうだいだ。工業用水がたりないからダムを造るとか、洪水を防止するために河川を改修するとか言ってるけど、それは嘘です。とにかく工事をやっちまえば、何百億という単位の金が動く。地元の農家の人たちは、工事の現場に出て、日銭を稼ぐことが出来る。工事にたいする反対意見なんか、現地では出てこない。出るとすればぼくのような立場からだから、遊び人がなにを言うかと、ひと蹴りされてそれっきりですよ」
──頭の中の川地図が、かたっぱしから現実とは一致しなくなっていきますね。
「日本の川は、世界でもっとも蛇行しているんです。自然のまま、手をつけずに蛇行させておけば、川はゆっくり流れるのです。-/-」
──蛇行している川をまっすぐにすると、周囲に新しく土地が生まれます。
「出来た土地は、高く売れるわけだから。全国的にそのようなアイディアがひろがっていますよ。ぼくの少年時代の川である熊本の菊池川も、全部コンクリートの護岸にすることに決まったのです。これは土建業者の考えだけど、今年は台風がこなくて、川の堤防がこわれなかったから、工事がなくて困る。だから工事をつくろう、ということです。平気でそう言ってますよ」

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