自警録
心のもちかた
書誌
| text | 唯野 |
| author | 新渡戸稲造 |
| publisher | 講談社学術文庫 |
| year | 1982 |
| price | 780 |
| isbn | 4-06-158567-3 |
履歴
| ?.7.23 | 読了 |
| 2010.7.15 | 公開 |
| 2010.7.16 | 修正 |
| 2010.7.19 | 修正 |
感想
五千円札にもなっている新渡戸稲造の本である。修養書の類ではあるが、割と読みやすくまた教養ぶっていない感じがあって好感が持てた。著書への批判に対しても無言実行というか下手な弁明はしなかったという辺りからも人柄が知れるというものである。有名ではあるがどういう人であるかを知らなかった意味ではよい勉強になった。但し、逆にいうと特別な感慨があるかといわれれば、そこまでには至らない本でもあった。
抄録
4 まえがきより
道徳を扱った文から成る本書でも、難解な抽象的理屈を並べるのでなくて、「平常毎日の言行――言行といわんよりは心の持ち方、精神の態度」を語る。しかもこの「日々の心得」「尋常平常の自戒」を述べるにあたって、えてして修養書にありがちな押しつけがましさが少しもない。
31
男一匹たるの資格は第一に勇を揮(ふる)うて己れに克つにありと思う。己れに克つものはほかに勝つこともさほど難事でない。己れに克つものは世界に勝つことを得(う)と古人の言えるのはこのことでもある。-/-
32 cf.34
-/-孔子は答えて、
「君子は義をもって上とす。君子勇ありて義なければ乱を為す。小人勇ありて義なければ盗をなす」と。
じつにそのとおりで、古人の語に、
「深沈重厚は是れ第一等の資質、磊落雄豪は是れ第二等の資質、聡明才弁は是れ第三等の資質なり」と。
38
-/-女性の弱きに乗じて彼らを弄び、あるいは彼らを苦しめるがごときは、これ男性の権能を濫用するのはなはだしきもの。力ある者が力なきものを養いかつ護るこそ、生物界における永遠不易の法則である。
39
男子は須(すべか)らく強かるべし、しかし強がるべからず。外弱きがごとくして内強かるべし。
負 け て 退 く 人 を 弱 し と 思 ふ な よ 智 恵 の 力 の 強 き 故 な り
とは、真の男子の態度であろう。男もこの点まで思慮が進むと、先きに述べたる宗教の訓(おし)うる趣旨に叶うてきて、深沈重厚の資と磊落雄豪の質との撞着が消えてくる。かくなると羊のようにおとなしい性と虎のごときたけき質とを兼備する人格が出るであろう。漢学者の使用する一句に、「羊質虎皮」というのがあって、外面虎皮(こひ)をかぶりて虚勢を張り、内心卑怯きわまる偽物を指す成語としてあり、-/-
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