ホーム > 読んだ > 国内

「IMT-2000」の全貌
アイエムティーニセンノゼンボウ

書誌

text唯野
author高槻芳, 杉山泰一
publisher日経BP社
year『日経コミュニケーション 2001.4.2』p.90-113

目次

1感想
2抄録

履歴

2001.4.19読了
2001.4.20公開
2002.11.28修正

感想

こういう通信系の情報の速報性では評価できる雑誌である日経コミュニケーションの記事より。今年に入ってからは、この雑誌に限らず IMT-2000 も大きく取り上げられるようになっているが、いずれにしても現段階では実際のサービスが開始されていないため、あくまでも予想の範疇ということになる。(第一、本格的なサービス開始も延期が伝えられたばかり。)そのため、この記事に関しては、他の参考文献や実際のサービス開始時の内容なども含めて補う必要があるだろう。

追記

というわけで内容の一部を『NTT DoCoMo テクニカルジャーナル』の「IMT2000 特集」で補いました。本家の情報なので最も信用できると思います。また、この特集記事中の 「技術概要」 を別の読書ノートとしてまとめました。(2001.7.13)

抄録

第 3 世代(3G)の携帯電話となる「IMT-2000」が、世界に先駆け日本で NTT ドコモにより FOMA (Freedom of mobile multimedia access) の名称で実用化される。第 1 世代のアナログ方式、第 2 世代のデジタル方式に比べ、圧倒的に高速なデータ通信の可能な点が大きな特徴で、これにより多彩なサービスへの応用が期待されている。例えば、UIM (User Identity Module) による一契約での複数端末への使い分け、電子決済、動画再生などが挙げられる。

サービス第 1 世代(アナログ : 1979-)第 2 世代(デジタル : 1993-)第 3 世代(IMT-2000 : 2001-)
実現方式NTT アナログ、TACSPDC、cdmaOneW-CDMA、cdma2000
周波数帯800MHz 帯1.5GHz帯(現在では800Mhz 帯を含む)2GHz 帯
用途とエリア国内通話国内通話(簡単なデータ通信)世界通話(多様なデータ通信)

# 日本では 2000 年 3 月に携帯電話加入者数が固定電話加入者数を上回った

一方、IMT-2000 そのものとしては ITU による国際規格であるのが特徴で、標準化(3GPP)に伴うサービスの汎用化が期待されている。元々は西暦 2000 年頃に周波数帯 2000 MHz、最大伝送速度 2000Kbps を共通項として、国際ローミング、モバイルマルチメディア、パーソナルサービス(移動体端末の多様化)の実現を目指していた。しかし、実際には複数の方式が存在する結果となったため、当初の目標だった規格の統一は達成されていない。

ITU 勧告名規格名概要
IMT-DSW-CDMA(日本)、UTRA-FDD(欧州)両者はほぼ同じ、欧州のデジタル携帯電話で主流である GSM 拡張方式を使う。現状では最も広がる見込み
IMT-MCcdma 2000(アメリカ)cdmaOne を拡張したもので更に x1 と x3 とに分かれる。x1 の無線チャネルを束ねたのが x3。x1 は IMT-2000 が目指した通信速度としての 2Mbps を満たさない
IMT-TCUTRA-TDD(欧州)、TD-SCDMA(中国)UTRA-TDD は基地局-端末間の周波数が上り/下りで同じもののことをいい、違うのが FDD。なお TD-SCDMA は 2G との互換性がない
IMT-SCUWC-136(アメリカ)アメリカで使われるデジタル携帯電話方式のひとつである D-AMPS の拡張方式。通信速度は非 2Mbps
IMT-FTDECT(欧州)欧州版 PHS である DECT の 2GHz 版。通信速度は非 2Mbps

日本で IMT-2000 の事業取得をしているのは NTT ドコモ [W-CDMA]、J フォン(日本テレコム系) [W-CDMA]、au (KDDI 系) [cdma2000] の 3 つで、現在の予定だと、およそ 2004 年 3 月の時点で 3 事業者ともが全国での人口カバー率 90% となるかたちになっている。同様に、この頃までにデータ通信速度の方は 64-384Kbps、都市部で 2Mbps となる見通し。また、料金に関しては FOMA の音声通話料が現行の PDC 並、データ通信料が現行の 1/5-1/10 と予定されており(ちなみに i モードのパケット料金は 0.3円/128バイト)、事業展開の方向などによっては定額制の登場も考えられる。それに伴い、バックボーンも IP 化されコストダウンが図られることになる。これとは別に、国際ローミングが実用レベルに達するのも諸外国で W-CDMA の普及が本格化する 2004 年頃になると見られている。

上述のように多様なサービスが見込まれる IMT-2000 では端末も用途によって多様化されるのが確実視されている。具体的には、テレビ電話型やメモリモジュールを始めとした拡張モジュールの登場、より精度の高い位置情報サービスや PDA との融合などで、これらが動画再生や音楽配信と連動するようになる。当然、そのための OS には Symbian の EPOC (ノキア、エリクソン、モトローラ、松下など) や Microsoft の Stinger (サムスン、三菱など) が登場する見込みで、これらでは更に API も用意される。この結果、開発環境も含め移動体はますます小型 PC に近づくことになる。

具体的には、より表現力の高いブラウザフォン・サービス(i モード)の提供が予定されている。例えば、スポーツの試合結果を文字だけでなくハイライトの動画と並行して閲覧することができ、Java を用いたインタラクティブ面での拡張も可能となる。一方、コンテンツ記述言語も統一の方向へ向かっており、XHTML をベースとした WAP NG (Next Generation) で互換性の問題は解消される可能性が高い。技術面でいうと、動画再生の標準となりそうなのは MPEG4 で、用途として個人放送などが考えられる。また、情報端末とのインタフェースとしては Bluetooth (2.4GHz 帯を使用)が有力となっている。Bluetooth では 1 台のマスターに対して 7 台のスレーブが接続でき、音声とデータの同時伝送も可能で(最大速度は回線交換で 64Kbps、パケット交換で非対称通信が 723.2Kbps、対称通信が 433.9Kbps)、現在は 2.0 の仕様策定が進められている。(FOMA では音声通信とパケット通信の併用が可能になっている。)

これに対し決済サービスへの応用に関しては国際的な統一方式がまだ存在しない。このため現状では企業同士による連衡が中心で本命といえるものは存在せず手探りの状態にある。しかし、将来的には UIM や Bluetooth に連携したサービスとして提供されるのは間違いない。

これとは別に IMT-2000 では UIM による複数端末の使い分けが可能となることで、「1 端末 1 番号」の制限がなくなる。これは GSM 方式で使われていた (日本の 2G では導入されなかった) SIM (Subscriber Identity Module) の拡張したもので、利用目的に応じた端末利用に拍車をかけることが予想される。(そのため UIM は認証機能を持つ。)また、現行の端末の電話番号をそのまま IMT-2000 端末へ移行させることも可能になっている。(NTT ドコモ では 3G でも電話番号体系を現行と同じにする。但し、番号の需要を満たすために 090 だけでなく 080 が用意される。)

一方、データ通信では、FOMA がサービス開始当初で最大が上りで 64Kbps、下りで 384Kbps を実現する。これは現行の携帯電話の 10 倍以上であるため、これによって移動体もブロードバンドの仲間入りをすることになるが、CDMA の仕組み上、同時に利用するユーザが増えると一人あたりの速度は低下する。このため速度としては各基地局単位でのスループット(セクタ・スループット)に強い影響を受けるかたちとなる。しかし、規格としてはより高速なものが次々と提案されているため、有線を追うかたちでの新サービスの展開も十分にありえる。

Up