3Gは「9月26日正午」開始 巨大連合が世界を巻き込む
書誌
| text | 唯野 |
| author | 杉山泰一 |
| publisher | 日経 BP 社 |
| year | 『日経コミュニケーション 2002.4.15』p.128-137 |
履歴
| 2002.4.23 | 読了 |
| 2002.4.23 | 公開 |
| 2002.7.13 | 修正 |
感想
欧州での 3G 動向を扱った記事。長さ的にもよくまとまっていると思う。ちょうどそろそろ知りたいなという感じだったので時期的にもよかった。
しかし、そうのほほんとしたことばかりも書いてはいられない。というのも、ここから演繹的に導き出されるのは、3G の世界では日本の移動体(携帯電話)産業も世界を相手に戦うことになるという点である。それはコストはもちろんとして品質でも同様で、そうなると(最近のような回収騒ぎも許されなくなり)日本の移動体産業も厳しい状況になるだろう。2G での PDC が日本独自規格だったというのは、逆にいえば産業としては一種の鎖国状態だったわけであり、世界との競争から逃れていたということでもある。日本の移動体が i-mode で進んでいるという意見もあるが、国際ビジネスマンから見れば世界の主流である GSM が使えない以上「日本の携帯は使えない」という評価の方が一般的なのであり、やはり日本の移動体産業全体が特殊だったということである。
そうなれば日本のメーカでも海外製の端末を OEM して安価に自社ブランドとして販売したりするのが普通になるだろう。結果、必然的に端末価格も下がるだろうし、GSM の世界がそうであるように、(現在の日本のような)端末メーカがキャリアに従属するような形態もなくなるはずである。それらを考えると企業やエンジニア個人には今まで以上の競争力が求められることになる。当然、そのような競争力というものは一朝一夕にして得られるものではないし、世界が競争相手となった時点で始めたのでは既に遅い。今、何に焦点を当てて力をつけるかを明確にし、かつ実行していくことが非常に重要だと思う。それは企業ならば経営資源の力点の置き方に関わってくるし、個人ならばスキルとして何を身に付けるか――ということだ。
# やはり語学力かなと思う今日この頃。
抄録
第 3 世代携帯電話(3G)が今年には欧州でもサービス開始となる。特に欧州では 2G の主流である GSM と 3G の W-CDMA との親和性が高いため、欧州での 3G をめぐる動きは日本にも影響が大きい。(日本が世界に先駆けて 3G を商用化した理由のひとつは、世界から孤立している PDC からの脱却もあるため。)しかし、3G の事業免許を取得していても周波数の落札値の高騰、IT 不況による株価下落などによる資金繰りの悪化で、更に投資が必要となる 3G への移行に躊躇する業者も少なくない。特に収益改善策として期待されていたプリペイドサービスや WAP によるブラウザフォンサービスが振るわず、既に携帯電話の人口普及率が 70% を超えている欧州では、新規ユーザ獲得よりも通話以外の付加サービスによる収益改善が至上命題となっているためである。
このため、最近では携帯電話事業者同士による資本提携などが進んでいる。これはいくつかグループがあり、具体的には英ボーダフォン(JPHONE はここに含まれる)、オレンジ・フランス(フランス・テレコムの携帯電話部門)、NTT DoCoMo などのいずれかを中心にした連合が存在し、これらは将来的な国際ローミングや 3G 向けアプリケーション開発まで視野に入れているものが多い。実をいうと、一方で 3G 事業者には各国の通信主管局から一定期間内でのサービス実施を義務付けられているケースが多く、その意味では 3G 開始を避けられない事業者も多い。その上で、現在、世界最大の携帯端末メーカであるノキアは「2002.9.26 に対応端末を出荷して 3G を開始する」としている。この結果、ノキアに歩調を合わせて他の端末メーカも参入し、事業者側も投資を回収する流れに移るものと考えられている。
そうなると気になるのは、欧州での 3G 開始時点での具体的なサービス内容だが、これは現行の FOMA 並になる模様である。具体的に通信速度はパケット通信が最大 384Kbps、データ通信が最大 64Kbps で、W-CDMA 仕様のうちリリース 99 の 2001.6 版(3GPP が 99 年末に標準化したもの。これらの仕様は主に数ヶ月おきに細かいバージョンアップがされている)を使う。(仕様が同じであれば端末は流用できるということ。)しかし、現状では 3G 特有のキラーアプリケーションがあるわけではないため、通信速度アップによる全般的な使い勝手の向上が売り文句となりそうである。また、現時点では端末として 2.5G (GSRS = GSM + パケット通信)のものが多いため、これとのデュアル端末などにより徐々に移行を進め、同時に 2.5G で 3G 向けサービスへの開拓を行うということが予想されている。
一方、米国ではサービスの主流が現在でも音声通話であり、3G 向けの周波数を既に 2G で使ってしまっているという特殊事情がある。(利用周波数帯が異なるため端末を流用できず作り直しが必要ということ。)このため現状では既存の設備の流用を行いやすい cdma2000 1x 陣営が優位に立っている。それ以外にも既にブロードバンドの普及している米国で現行の 3G の通信速度が受け入れられるかという問題もある。このため、ホットスポットを用いた無線 LAN との併用に注目が集まっている。(なお 2G のうち、GSM、D-AMPS(TDMA)、PDC 陣営が W-CDMA、cdmaOne が cdma2000 へ移行し、世界レベルでは W-CDMA が 8 割程度を占めるものと見られている。)
欧州での 3G の開始や普及は日本で見ると、何よりもまず端末において大きな影響を及ぼす可能性が高い。一般に欧州では端末は事業者に関係なく使用できるため、それだけに端末の差異化・価格の幅も広い。そのため普及価格帯も日本と欧州では異なり、欧州では(GPS では部品の共通化も進んでいるため)平均価格も日本の 1/2 程度となっている。この結果 3G での高性能(=高価格)端末がすぐに普及するかどうかは不明だが、GSM・W-CDMA のデュアル端末などが日本に押し寄せる日は近い。海外ベンダによる端末によって日本でも端末価格が下がり、市場構造の変わる可能性もある。また、海外での W-CDMA の普及は、(相互接続性の問題が解決される必要はあるが)国際ローミングの面でも影響があるといえる。
