解禁! これがブロードバンドだ!!
カイキン コレガブロードバンドダ
書誌
| text | 唯野 |
| author | 木村克巳、中野功一、高村修治 |
| publisher | ソフトバンク |
| year | 『UNIX USER 2001.7』p.28-55 |
履歴
| 2001.7.13 | 読了 |
| 2001.7.13 | 公開 |
| 2001.7.15 | 修正 |
感想
フレッツ ADSL を申し込んで、ようやく私もブロードバンドの仲間入りをすることになったので、大急ぎで勉強しようと思い、手頃な記事を探して読んでみた。アナログな帯域の話から始まって(ここでは取り上げていないが)Linux/FreeBSD での PPPoE やルータの設定などバランスの取れた特集になっていると思う。ただ、これだけでは最低限の知識なので、類似のものも含めてもう少し情報収集したいと思う。
抄録
ブロードバンドとは
電子技術における帯域とは簡単にいうと周波数特性(周波数幅)のことをいう。電話はこの周波数幅を意図的に狭くしたもので、オーディオ(0-20kHz)に比べると国内の電話は 300Hz-3.4kHz を音声として通過させている。(だから電話特有の声になる。)この伝送経路の狭さを取り払ったのが DSL 技術であり、電話の音声よりも高い周波数を電話線に混ぜて(これを重畳(ちょうじょう)という)流すことで実現している。(実は黒電話の 0Hz は直流の局給電として利用されている。そして、パルス式電話は電源の極性を反転(交流)させることでダイヤル信号を作り出している。)
また、FM 放送では特定の周波数だけで放送をしているわけではなく、基本波を上下に移動させる変調方式で上下に幅(FM 放送の場合は 75kHz)を持って送られている。そして、この占有幅が音質に大きな影響を持つ。FM 放送がアナログからステレオになったときにも帯域を広げることで対応され、これはモノクロテレビからカラーテレビへの変化でも同じ理屈に基づいていた。そして従来だと例えば重複しない周波数の選択でテレビ局を選んでいたのが、技術の進歩により混在信号から目的のものを選択する精度が上がり、より情報を詰め込めるようになってきている。これがブロードバンド化の進む理由のひとつになっている。
このときケーブルに信号を流す方法としてはベースバンド方式とブロードバンド方式がある。ベースバンド方式はビットの 0/1 を High/Low にして送るパルス信号で、単純かつ安上がりだがロスが多いため短距離の伝送に使う。(PC 内部など。)一方、ブロードバンド方式は基本波の変化によって 0/1 を表現する。機器が複雑だが多重化しやすく信号が漏洩しにくいので遠距離の伝送に向く。
なお、帯域の広さは速さに直結しない。たとえるなら帯域の増加はエスカレーターの数が増えるようなもので、エスカレーター自体が速くなるわけではない。また、狭義のブロードバンドとは高速ネットワークのことだけを指す。(常時接続や定額制は運用面ということ。)また、現状では伝送路をユーザで共有する場合、同時使用率の試算係数として 10% 程度をみることが多い。(256 人なら同時使用は 25-6 人程度という具合。)
ここまでの話をまとめるとポイントは以下の通り。
- 帯域とは周波数幅のこと
- 情報量を増やすには帯域を広げる
- ブロードバンド伝送は多重化しやすい
- 重畳した信号は分離が可能
光ファイバ、ADSL、CATV、ブロードバンドルータ
光ファイバはデジタル転送に最も安定感があるものの曲げ負荷に弱く曲率半径は最低で 3cm といわれ、既存の配管では駄目なことが多い。宅内の光ファイバはメディアコンバータ(プロトコル及び光-電気変換を行う)に接続されイーサネットを出力に使うのが一般的となっている。そのため、集合住宅などでは、どんなメディアコンバータをどこに置くかで事情が変わってくる。また、帯域が大きいといっても現状のサービスはベストエフォート型であり、また B フレッツでは PPPoE のため IP アドレスはプロバイダに依存する。
一方、ADSL は東京めたりっく通信を草分けに急速に普及しつつある。ここで取り上げる 3 つの中では最もノイズに弱く通信速度が非対称のため、速さは実際に引くまで分からない。屋内配線ではイーサネットインタフェースとなる DSL モデムと電話の音声信号とを分離するスプリッタが必要。しかし、引き込みそのものはこの 3 つの中では最も問題なく行える。
最後に CATV インターネットの場合は TV の 1 チャンネル分 6MHz のバンドを 1 単位の下り回線として使い、そこにアナログ変調した IP パケットを送る。だいたい 1 チャンネルで 30-40Mbps を得られるので、それを加入者で共有する。通信は非対称でまとめにくいのがネックとなっていたが、DOCSIS (Data Over Cable Systems Interface Specification) による標準化が進められている。引き込みは電話線同様配管を利用することが多く壁から同軸ケーブルを引き出せる。サービス内容は各 CATV によってまちまちなので個別に調べなければならない。なお、CATV では流合雑音と呼ばれる電気雑音が集合住宅で発生しやすく、その解決策として HomeRun という構内 ADSL のような仕組みがある。
ブロードバンドに対応したルータのことをブロードバンドルータといい、接続されるセグメントはイーサネットで PPPoE を使うのが一般的となっている。(CATV の場合は PPPoE をオフにする。)ブロードバンドルータでチェックすべき点として、PPPoE クライアント、LAN 側ポート数、LAN 側速度、WAN 側速度、DHCP、ファームウェアのアップグレード、NAT/IP マスカレード、ローカルサーバ(WAN 側からの LAN 側設定)、DMZ (バーチャルコンピュータ、WAN 側からの接続を特定の 1 台に転送してセキュリティを高める) などがある。
PPPoE と光通信技術
ブロードバンドの根底を支える技術として ATM があるが、ATM はインターネットでの利用を想定していなかったため、実際の接続では別の技術と組み合わせて実現されることが多い。PPPoE (PPP over Ethernet) もそのひとつで DSL とインターネットを効率的に接続するための技術となる。
PPPoE の理解では、まず PPPoE の接続先となる SMS (Subscriber Management System、または BAS とも呼ばれる)の登場から捉えると分かりやすい。そもそも DSL の生まれた背景というのは、インターネットの爆発的な広がりによる CATV インターネットとそれ以前の ATM への投資の回収に危機感を感じたパシフィックベル、ベルサウス、SBC、アメリテックという大手通信会社による通信機器ベンダへの共同投資の結果にある。(それを元にフランスのアルカテル社が DSL を実用化した。)しかし、当時の DSL の集線装置である DSLAM による ATM-インターネット間接続は必ずしも効率がよくなかったため、そこでパシフィックデル、ベイ・ネットワークスなどのエンジニア(後の Redback Networks)によって作られたのが SMS である。これによって DSL の数千人単位での集線が可能となり、DSL の普及が一気に広まった。更に、その上で DSL 利用者をダイヤルアップアクセスのように管理したいという要望に応えるかたちで、PPP を DSL 上で使えるように拡張した PPPoE が生まれた。(DSL 業者にしてみれば、これによって回線管理と利用者管理を分離でき、利用者単位でのサービスが提供しやすくなる。)そして PPPoE は 1999 年 2 月に RFC2516 として標準化された。
PPPoE はクライアント・サーバ型として動き、基本的には PC 上にクライアント、SMS 上にサーバを置いて使われる。クライアントはブロードキャストして接続先のサーバを探し、サーバがクライアントのユーザ名・パスワードを認証すると、IP アドレスをクライアントに割り当てて PPP による IP 通信を開始する。認証データベースとして RADIUS が使われ、ここでユーザ単位の接続時間やデータ量まで集計する。最近のブロードバンドルータでは PPPoE 機能を備えるものが多いので、この場合には PC 側にクライアントをインストールしなくても、ルータをクライアントとして利用できる。
このように PPPoE はユーザ側というよりも通信事業者側でメリットの大きい技術だが、それでもユーザ側にもたらされる間接的な利点として以下が挙げられる。
- DSL はモデムを設置するだけでよい (PPPoA では設置ごとの設定が必要)
- 回線設定、利用者登録が簡素 (データベースの変更だけで対処可)
- 複数の PC から利用できる (それぞれの接続を区別できる)
- ホールセール(wholesale : 卸売り)の実現 (ISP に DSL 設備がなくてもよい)
- URL 表示 (通信事業者側が接続時の URL を指定して情報を提示できる)
- 利用者ごとの付加サービス (加入者単位でのセキュリティ、QoS 管理など)
PPPoE を技術的に見てみると、宅内 LAN 上では IP データが PPP でカプセル化されている。そのため、PPPoE ではルータではなくハブかスイッチを経由する必要がある。PPP カプセル化されたものが SMS に届くと PPP ヘッダが外されて IP パケットとして転送される。PPPoE を他のトンネリングプロトコルと比較した場合、VPN プロトコルに比べて簡素で実装の容易な点、ブリッジプロトコルであるため IP 設定なしのブロードキャストで接続先を認識できる点などが利点だが、これらは必ずしも対立するものではなく補完的な存在と見る方が自然といえる。
NTT の光ファイバネットワーク
現在の電話線も背後では既にほとんどがデジタル化されている。そのため問題は現在の電話局で行われているアナログ信号への変換ポイントを、どうやってユーザ宅まで持ってくるかにかかっているといえる。実際の光ファイバの導入形態ではシングルスター型とパッシブダブルスター型が有力視されている。NTT の光ファイバシステムもパッシブダブルスター型を基本としたもので、FTTH (Fiber To The Home) とはユーザ宅までを光でつなぎ、そこから先がアナログになるもののことをいう。
光ファイバそのものは石英(ガラス)素材の繊維に光を通して通信するケーブルのことだが、光の特性である直進性、到達速度の速さにより帯域が広く損失が少ないというメリットがある。(損失が少ないというのはファイバ中での損失が少なくファイバからの放射が少ない、また漏洩が少なくノイズも少ないということ。)最近は強度面の問題も解決されつつあるが、接続が容易でなく(融着という方法が一般的だが時間と手間がいるためコストがかかる)変換の必ず必要という点が欠点となっている。
メタル線では流れてきた電流が戻ってくるための経路を含めて 2 本の銅線による平衡伝送が普通だが、その必要のない光ファイバでは基本的に一方向のみとなる。そのため光ファイバで双方向通信を行うには TCM (Time Compression Multiplexing : 光ファイバを交互に使うピンポン方式)と WDM (Wavelength Division Multiplexing : 波長分割での多重化)などの方法が用いられる。NTT の π システムの場合だとユーザ宅側の光ファイバ端点(ONU : Optical Network Unit、近くの電信柱など)から NTT 局内の端点(OSU : Optical Subscriber Unit)への過程で光ファイバが束ねられていき、局内のスプリッタ(Splitter、一般にはカプラ)で(単純に)分波・合波される。ここで行われる多重化方式のことを TDM/TDMA という。下りの TDM (Time Division Multiplexing)が局側 OSU からの単一データを全 ONU へ送り届け、上りの TDMA (Time Division Multiple Access)が他の ONU とデータが衝突しないようにタイミングをずらして信号を送る。このタイミングの制御や光-電気変換も OSU が行う。ONU も自身に電源が必要であったりメンテナンスを要するため、通常はある程度まとめて配置される。
ちなみに電柱に何かのケーブルを敷設する場合には使用料がいる。通常は一番上の方を電力会社が、下の方を NTT が、間を CATV や有線放送が使っている。
