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三略

書誌

text唯野
author真鍋呉夫(訳)
publisher中公文庫
year2004
price724+tax
isbn4-12-204371-9

目次

1感想
2抄録

履歴

2008.3.26読了
2010.5.5公開
2010.5.6修正

感想

『六韜』を読んだので今度は『三略』を取り上げる。六韜に比べるとだいぶ薄いのだが、120ページしかない古典の文庫で 724 円 + 消費税というのは素直に高いなと思う。なお、三略とは『上略』『中略』『下略』より成るので、三略というようである。(cf.73-74)

抄録

11-12 cf.84

軍事についての最高の指針というべき『軍識』のなかに、

「柔よく剛を制し、弱よく強を制す」

という一節がある。

そういえば、柔軟なものにはいろいろな効用があるが、生硬なものはとかく災いのものになりやすい。弱者は人に助けられることが多いが、強者は攻められることが少なくない。

また、柔には利益を生む可能性があるが、剛にはむしろ損失を招くおそれがる。同様に、弱には物の役に立つ性質があるが、強にはぶちこわす性質がないではない。

しかし、だからといって、絶対的な意味で柔と弱だけで成りたっているような事物は、どこにも存在しない。柔あれば剛あり、弱あれば強ありというのが、存在の真相である。

したがって、肝腎なのは、この四者の性質に通暁して、いかなる情勢の変化にも即応しうるような、自在な態勢を整えておくことである。-/-

41-42 cf.52-53

そもそも、一軍の将たる者が部下の忠告をきかなければ、たちまち英雄たちは退散してしまう。その献策を重んじなければ、策士たちは離反してしまう。善悪を混同すれば、功臣たちは怠けるようになる。

自分の事ばかり考えていれば、部下たちはその失敗を上官のせいにするようになる。自分の事ばかり自慢していれば、部下たちはめざましい働きをしなくなる。陰口を信ずれば、部下たちの心は離れていく。

財貨をむさぼれば、部下の不正を防止することができなくなる。妻妾に心を奪われれば、部下たちも女色に淫するようになる。

以上、八項にわたる心がけのうち、その一つでも怠るようなことがあれば、部下たちはその将に服従しなくなるであろう。また、その二つを怠るようなことがあれば、軍中の規律は完全に失われてしまうであろう。その三つを怠るようなことがあれば、部下たちは部署を放棄して逃亡してしまうであろう。その四つを怠るようなことがあれば、国の安全を守ることさえおぼつかなくなるであろう。

89-90

道・徳・仁・義・礼の五つの徳目は、本来一体を成していて、どの一つを切り離すこともできないが、このうちの道とは、人が自然に履行できる徳目のことである。また、徳とは、自然に充足できる徳目のことである。仁とは、自然に親愛できる徳目のことである。義とは、自然に志向できる徳目のことである。礼とは、自然に体得しうる徳目のことである。以上のうちの一つだけでも欠けていてはならない。

111/112 解説より

要するに、『三略』は『六韜』と共に史家のいわゆる偽書で、おそらく秦漢の間に撰録されたものであろう、というのである。

ただし、それが偽書であるという比定は、必ずしもその内容が無価値であることを意味するとは限らない。古来、架空の名義に韜晦してひそかに志を述べることは、むしろ乱世の隠士がこのんで選んできた生き方の一つであったからである。-/-

『三略』の略は戦略、あるいは機略を意味し、その内容は上略・中略・下略の三部によって構成されている。

そのうちの上略は礼賞を設け、奸雄を別ち、成敗を著(あきら)かにしている。中略は徳行をさし、権変を審(つまび)らかにしている。下略は道徳を陳(の)べ、安危を害し、賢を賊(そこな)うの咎を明らかにしている。

以上が、本書が『三略』と名づけられた所以であるが、その顕著な特徴の第一は、本文の記述が七書の中でも最も簡潔だということであろう。

第二の特徴は、本書の戦略戦術論が道家的な認識、とくに老子の認識に準拠して縦横に展開されていることであろう。

121

ひろく読まれた『和漢朗詠集』(一〇一三)いらい、『三略』のことを「張良一巻書」とも呼び、やがて本書だけ神秘化され、軍記物や謡曲中で、孫・呉以上の扱いを受けるようになるという我が国の特殊事情については、岡見正雄校注『日本古典文学大系37 義経記』が詳しい。

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