遺産相続ゲーム
地獄の喜劇
書誌
| text | 唯野 |
| author | ミヒャエル・エンデ |
| editor | 丘沢静也(訳) |
| publisher | 岩波書店 |
| year | 1997 |
| price | 2,400+tax |
| isbn | 0-092049-9 |
履歴
| 2000.11.4 | 読了 |
| 2000.11.5 | 公開 |
| 2001.4.14 | 修正 |
感想
エンデの処女戯曲。解説で平田オリザが書くところによると、処女戯曲というものは誰のものであれ失敗作であることが宿命付けられているものらしく、本作もその例外ではないのだという。(ある程度の場数を踏まなければならないということ。)私には戯曲における演出の優劣など全くの門外漢なのでよく分からないが、登場人物が一人になってしまう場面の多さやエンデの描く幻想的な場面の表現の難しさなどが失敗の原因ということであるらしい。
作品の内容は遺産相続をめぐる人間同士の軋轢が人の死や裏切りを引き起こし、最終的な悲劇をもたらすというものになっているが、明確に特徴付けられた登場人物たちの立ち振る舞いなどが小説との違いになるのではないかと思う。(これに加えて登場人物の存在価値が均一的な点にエンデ自身は実験的な意味合いを置いていたようだ。)いずれにしても、深く触れるのは無理なので、この作品に関しては断片としての引用をするに留めたい。
抄録
2/221-239
登場人物の紹介。引用部分に出てくるアントーンは館の召使で宮殿の擬人化した存在との由。
27-28
アントーン (きびしく)これは手前の義務でございますが、この家に逗留なさる方には、どなたさまにも、はっきり説明しておかねばなりません。つまり、この巨大な宮殿全体は、たった一枚の、誤ることのない、生きた鏡でありまして、この鏡は、映しだされた像をすべて、その実像に投げかえし、その実像のほんとうの姿を明らかにしてみせるのです。おお、変容というものが語りえるものであれば。この家の変容を、そしてまたこの家に逗留する者の変容を、奇跡にみち、しかも恐ろしい変容を…… (cf.110 ほか)
48
-/-おまえたちはみんな、私の遺言が読みあげられるのを待っている。はたして読みあげられるのかどうか、またいつ読みあげられるのか、それを決めるのは、ほかならぬおまえたち自身である。というのも、私の遺志は、すでにおまえたちの手に委ねられているからである。おまえたちは、おのおの遺言の一部分をもっている。おまえたちは、ただそれを正しく並べ合わせるだけでよい。それを完成させたときに、それぞれになにが与えられるのか、読みとれるだろう。だが忘れてはならない。どの部分もおなじように重要であり、たったひとりでも自分の部分の提示を拒むなら、全体は理解できないままなのである。――これはゲームである。-/- (cf.170-171)
194
アントーン (大声で)耳があるのに、おまえたちは聞かない――目があるのに、おまえたちは見ない――だからいま、眠っている者がおまえたちに語らねばならぬ。石たちが叫びはじめたとき、ようやくおまえたちは見るにちがいない、聞くにちがいない。だがそのときにはすでに、おまえたちは聞くことも見ることもできなくなっているだろう……
